AI予測の”その先”へ!Anaplan Optimizerで販促計画の打ち方まで決めてみた【Animeplan第二弾】
前回、架空のアニメ実績データで売上予測モデル「Animeplan」を作った話を書きました。
Anaplan Forecasterで始める売上予測!架空のアニメ実績データで検証してみた
記事の最後に「一度動かすと、次に何が必要かが見えてきます」と書きましたが、実際そのとおりでした。
予測値が並んだ画面を眺めていて、次に浮かんだのはこういう疑問です。
「で、この予測を見て、何に活かしていけばいいんだろう?」「具体的にお金をどこへ投下すればいいんだろう?」
予測は「このままいけばこうなる」までは教えてくれます。
一方で「売上を最大化するために、これを使って何をするか」という具体的な指示までは出してくれません。
そして計画業務で本当にビジネス成果が出るのは、間違いなく後者の決定プロセスです。
そこで今回は、予測の先にある「打ち手」まで決めさせてみました。
具体的には、Animeplan に Anaplan Optimizer を増設して、売上最大化に向けて限られた販促回数で

「どの作品」、「どの地域」に「いつ」販促すべきか検討を行えるようにしました。
※本記事で扱うデータはすべてサンプルであり、実在の作品・実績とは一切関係ありません。
1. 予測は「どうなるか」しか教えてくれない
予測の数字が出るようになると、次に必ず出てくるのが「この数字をどう使うか」という話です。
ところが、ここで止まってしまうことも少なくありません。
そもそもどう活用するかもそうですが、どこにどういう手を講じるかは、これまでどおり会議で決まっている。
よく見かける光景ではないでしょうか。
また、その際、以下のような結末になることも珍しくないと思います。
- 声の大きい担当が推す作品に寄る
- 「前回もやったから今回も」で惰性が続く
- 守るべき条件が多すぎて全部同時に考慮できず、誰も「これが最善だ」と言い切れない
これは担当者の能力の問題ではありません。
単純に、人が比較できる組み合わせの数を、現実の制約が軽く超えているからです。
今回のAnimeplanで言えば、地域(東京・大阪・名古屋)× 作品 × 月の粒度で「販促を何回打つか」を決めることになります。
それだけで組み合わせは数百、数千通り、作品数によってはそれ以上にもなります。
しかも守るべき条件は一枚岩ではなく、多層になっています。
- 地域単位の上限(この地域で打てるのは合計◯回まで)
- 作品単位の上限(この作品にはこれ以上かけない)
- 地域 × 作品 × 期間単位の上限(同じ月に同じ組み合わせは1回まで)
- そもそも対象外(すでに完結している作品、取引対象外の組み合わせ)
Excelでこれを全部満たす配分を探すと、「条件を満たす案を1つ見つける」だけで力尽きます。その中で一番効く案までは、まず到達できません。
現場で起きているのは「最適化に失敗している」のではなく、「最適化を試みる余力がない」という状態です。
ここが数理最適化ツールの出番です。
Anaplan Optimizer は、線形計画法などのアルゴリズムを用いて、制約を守りながら目的(売上の最大化など)に最も近づく変数の組み合わせを探し出す機能です。
(イメージとしてはExcelのソルバーの高度プラットフォーム版です)
そしてAnaplan AI(Forecaster)と同様に、予測データを外部に持ち出す必要がなく、同一のAnaplanモデル内で「予測」から「販促計画の最適化」までがワンストップで完結するのが大きなメリットです。
2. Animeplanに販促の最適化を増設する
今回やりたかったのは「AIによる予測を踏まえたうえで、限られた販促回数をどの地域のどの作品に、どの月で振ると売上が最大になるか」を出すことです。
構成はシンプルです。
赤枠の箇所が今回増設した部分となります。

Optimizerの構成要素は、突き詰めるとこの3つだけです。
- 決めたいこと:地域 × 作品 × 月ごとの販促の実施回数
- 目的:販促により増加する合計売上金額の最大化
- 制約:地域や作品ごとの販促回数の上限
実際に組んでみて分かったのは、難しいのは設定作業ではないということです。
一度型が分かれば、画面上の設定自体はそれほど手間ではありません。
手が止まるのは、その手前です。
「なんとなく打ちすぎないようにしている」といった定性的なルールを「地域あたり月◯回まで」という明確な数値に落とす。
この作業をやると、これまで誰も明文化していなかったルールが表に出てきます。
最適化の導入が、実質的に暗黙知だった業務ルールの棚卸しになるというのは組み始める前には想定していませんでした。
3. 組んでみて分かった4つの勘所・実践ノウハウ
1. 時間軸(Timeディメンション)は別定義で相互参照させる
Anaplan Optimizerは通常のTimeディメンションを直接指定して計算することができません。今回は最適化専用の期間リストを別で用意し、実際のTimeディメンションと相互参照させる構造にしました。ここは設計初期につまずきやすいポイントです。
2. 計算を実行する前に、不要な対象を削ぎ落とす
計算処理の高速化と解の精度を高めるため、完結済みの作品や取引対象外の組み合わせは、Optimizerに投げる前にフラグ処理とアクセス制御で除外しました。最適化の品質は、計算前の「データの前処理」で8割決まります。
3. 効果の見積もりをどう線形に載せるか
販促の効果は、本来は線形ではありません。
今回は売上規模の閾値で単価の増減率を切り替えるという割り切りをしました。
精緻にしようと思えばいくらでもできますが、「現場が説明できる粗さ」「業務側がロジックを説明できて合意できるレベル」で止めるほうが運用に乗ると考えています。
ここは正解が技術側にあるというよりも、業務側との合意で進めていく必要があります。
4. 「解なし(エラー)」は業務ルール見直しのフィードバックとして使う
制約が矛盾していて条件を全部満たす解が存在しない場合等、解が存在しない場合はエラーが返ります。
最初は失敗に見えますが、これは「その条件は同時には満たせません」という業務側へのフィードバックとして使えます。
むしろ、そこで初めて「じゃあどの制約を緩めるか」という議論が始まる、という側面もありそうです。
4. 最適化を入れるべきか — 判断の3つの評価軸
前回の記事では「予測の置き場所をどう選ぶか」を3つの軸で整理しました。
最適化についても同じで、ツールを比べる前に、自社の課題がそもそも最適化向きかを確かめたほうが早いです。
今回組んでみて、判断の軸は次の3つに整理できると感じました。
1. 打ち手が「数えられる」か
動かしたい要素が「回数」や「予算額」のように数値で扱えるかがポイントです。
今回で言えば「販促を何回打つか」がそれにあたります。
「ブランドイメージを高める」といった定性目標は直接載せられないため、「イベント開催回数」などの定量アクションに置き換えられるかが鍵になります。
最適化が扱えるのは、数えられる意思決定だけです。
2. 守るべきルールを、数字で書き出せるか
上限・下限・排他条件を箇条書きにできるかどうかです。
ここが曖昧なままだと、出てきた答えを誰も信用しません。
そして先ほど書いたとおり、この作業は想像よりも骨が折れます。
ただ、ルールが書き出せない状態というのは、最適化以前に「その判断が属人化している」というサインでもあります。
最適化を入れるかどうかにかかわらず、一度やっておく価値のある棚卸しだと感じました。
3. 効果の見積もりに、現場が納得する根拠があるか
打ち手から成果への換算(1回打つといくら増えるのか)に実績か、少なくとも合意された仮定があるかどうかです。
逆に言えばここを何かしら決められれば「それっぽい数字を出す装置」ができあがります。
もちろん最初から精度が高い必要はありません。
必要なのは、出てきた配分について「なぜこうなったか」を担当者が自分の言葉で説明できることです。
前回の記事で「予測がブラックボックスになると現場は使わなくなる」と書きましたが、こちらも同様です。
5. 予測の次の一歩は、思ったより短い
今回作ったものも、前回と同じくデモです。
実際の販促データを使ったわけでも、効果測定を精緻に積み上げたわけでもありません。
それでも確認できたことがあります。
最適化は必ずしも「予測が完成したあとの、大がかりな次期プロジェクト」である必要はないということです。
既存の予測モデルを壊さず、対象と制約を絞って増設するところから始められました。
そして今回もまた、動かしてみて初めて見えたことがありました。
ハードルは技術というよりも、「何を最大化したいのか」「何を我慢するのか」を決めきれるかどうかにある、ということです。
逆に言えば、そこさえ決まれば、膨大な組み合わせから最善を探す作業は機械のほうが圧倒的に得意です。
残っている宿題もあります。
今回は予測部分を前回のまま流用したので、アルゴリズムを変えたら最適化の結果はどう変わるのかは手つかずです。
予測の入口が変われば、当然そこから導かれる打ち手も変わります。
ここは今後、あらためて試してみたいと思っています。
予測の数字は出ているのに計画は変わらない、配分の根拠を聞かれると説明に困るといったことに、もし心当たりがあれば、今回の3つの軸で一度確認してみてください。
FREEDIAでは、こうした小さな検証から一緒に始めるご相談も受けています。
今あるデータで何ができそうか、という段階からでもお気軽にお声がけください。
参考
Anaplan Optimizer(公式製品ページ)
Optimizer | Anapedia
Anaplan Forecasterで始める売上予測!架空のアニメ実績データで検証してみた(前回記事)















